未来を、うるおす。奈良川上村

No.14

Inima tobo

川上村での暮らし、
出会う人たちとの交流、自然…
ここでの経験が
私たちの作品を生み出しています。

約20年前に川上村へやってきた
陶芸家の鈴木雄一郎さんと智子さんご夫妻。
二人で生活陶器を中心に販売するショップ
「いにま陶房」を運営しながら、
川上村の自然の中で作品作りの日々を過ごしています。
また、村のアート施設「匠の聚」で暮らす
アーティストとして、
文化活動のお手伝いや
全国各地のクラフトイベントに出店するなど精力的に活動も。
日々のアート活動や暮らしについてうかがいました。

陶芸家として
夫婦共通の夢だった「独立」。
これまでの暮らしや仕事を
手放すことへの不安は妻の「行こ!」
の一言で吹っ切れました(笑)

以前は滋賀県の信楽で生活していた鈴木さんご夫妻。川上村との出会いは「匠の聚」のアーティスト募集だったそう。「妻とはお互いに信楽焼の工房に勤めながら作品を発表し、独立を夢見ていた同士でした。川上村への移住で、念願の独立が叶うと真っ先に考えましたね。ただ、それまでの仕事、生活がすべて変わることへの覚悟も必要で」。それでも、智子さんの力強い「行こ!」という一言で移住を前向きに考えるように。「なんとかなるかな、という気持ちにさせてくれた一言でしたね(笑)。信楽での生活は充実していたけれど、周囲は同業の陶芸家ばかり。話題になるのも仕事のことばかりで。川上村では陶芸以外のアートやいろんな人との出会いにも期待していたんです」。お二人は子育てやアートイベントの参加を通して、少しずつ仲間や村の人たちとのつながりが生まれていくのが実感できるようになりました。「自由な発想で仕事ができる環境は、作陶にとても活きています。川上村は空気も水もよくて、健康で、静かで。人工的な光が一切なくて引っ越してきたときはこんなきれいな星空を見られるのがうれしかったのを今でも覚えています。ここでの暮らしや経験が器という形になっている感覚。川上村がだんだんと自分の居場所になっていく安心感の中で作陶できるのはすごく幸せです」と智子さんが話してくれました。

食卓にやさしさとぬくもりが寄り添う、
ユニバーサルデザインの器。
デザインの追求はまだまだ続きます。

「いにま陶房」では、奥様が作る自宅はもちろん、カフェやプレゼントにしたら喜ばれそうなモノトーン基調のおしゃれな食器と、旦那様のやさしい色合いところんとした器が特徴的な「やさしい器シリーズ」を販売しています。「やさしい器シリーズのきっかけは妻が病気で片麻痺になったことです。介護用の器って“いかにも”なデザインが多くて違和感がありました。無事に退院して家での生活に戻ったときにこの経験を形にしたくて」。やさしい器シリーズのはじまりは「みんなが同じように使える器をつくること」だったそう。販売前には、お子さんに試作品を使用してもらって改善を重ねながら今の形が生まれました。「これからもどんどん改良を重ねていきますよ。村の人たちにも実際に使っていただき、その様子や感想を基にするなど、今でもリサーチを続けています。“いいもの”と気づいてもらうことを大切にしています」。

陶芸を通して伝えられるもの、
伝えたいもの。
川上村の魅力って、
村の人の素直な笑顔だと思うんです。

村内の文化活動にも積極的なお二人。「陶芸イベントでは、川上村の空気を吸ってみなさんのびのびしてくれているように感じます。最初はろくろ回しに不安を感じていた方が、どんどん夢中になっていく姿は可愛らしく、微笑ましいです。出張教室で陶芸にはまってくれる村の人もいます。どんどん作りたいものが増えて生きがいに感じてくれる人も。小さな力かもしれないけれど、私たちはそういった、みんながワイワイ過ごすような村の活力を外に伝える役割もあると思っています」。

 
 
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