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当たり前とはなんだろう -正反対の夫婦がつくる幸せのかたち-

当たり前とはなんだろう -正反対の夫婦がつくる幸せのかたち-

2018年11月27日

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川上村では、色んな人が参加しながらホームページを使って情報発信する「 むらメディアをつくる旅 」を開催しています。今回は大辻孝則さん・早稲田緑さんをインタビューし、インタビューに参加した5名(久保田紗佑歌さん、小池悠介さん、齊藤美結さん、若林佐恵里さん、花輪佑樹さん)が記事を作りました。このページでは代表例として小池さんの記事を掲載していますが、外部ブログに他4名分の記事も載せています。そちらもぜひご覧ください!

 

▼久保田紗佑歌さん

常に『可能性』を探る、別々の人生を歩んできた2人が目指す未来とは…

 

齊藤美結さん

手づくりの幸せが息吹く、豊かな暮らし。 山の上で紡がれる「あたらしい家族」形とは?

 

▼花輪佑樹さん

ハンドメイドで幸せを紡ぐふたり。早稲田さんと大辻さんの暮らす日常。

 

▼若林佐恵里さん

それはあたりまえじゃない! 対話を通してここちよさと自由を追求することが社会を少し動かす道

 

 

小池悠介さん

当たり前とはなんだろう -正反対の夫婦がつくる幸せのかたち-

 日本人が旅行などで外国に行くとその国の文化や習慣の違いに驚かされ、改めて日本という国がどのようなものなのか再認識させられる人も多いという。日本で当たり前だと思っていることが実は世界では当たり前ではなかったり、また世界では当たり前であることが日本ではなかなか受け入れられないことだったりする。では、その当たり前であることとは一体なにであろうか。今一度、考えて直してみませんか。

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 奈良県南東部に位置する川上村。高齢化率が50%を超えており、限界集落とよばれる地区もある。川上村の中心部から車で約10分ほど山道を上ったところにある高原地区。今回インタビューさせていただいた大辻孝則さん・早稲田緑さんは高原地区在住の夫婦である。孝則さんは高原地区で生まれ育ち川上村役場で働く地方公務員。緑さんは東京育ちで、現在は企画会社の正社員でありがら、出社しない働き方を実践している。育ってきた環境から現在の仕事まで正反対の夫婦ではあるが、ほかの夫婦では当たり前であることをしていない。例えば、二人は籍をいれていない、事実婚なのである。

 

●入籍という当たり前

 緑さんは「自分が当たり前であると思っていることがほかの人とズレている」とおっしゃっていた。そのうえで、「行動と言動が伴うようにしたい。違和感を持ったまま生きたくない」ともおっしゃっていた。籍を入れるということに対しても、スペインでは両親の名字を組み合わせて名乗るのに対し、日本では夫婦は同じ苗字にする、それも女性が性を変えることが当たり前とされている。このことに関して疑問に思っていたようだ。

 一方の孝則さんは普通に入籍するものだと思っていたという。しかし緑さんに言われて考えてみると、自治体が管理したいだけであまり理由がないことに気づいたようだ。

 二人には子供が一人いて、現在緑さんは妊娠中である。事実婚となると親権は父親にはないため胎児認知をして、結婚式をおこなった。子供のためだという。親族だけでやる予定が、かれこれ50人ぐらい集まったという。

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●働き方という当たり前

 一般的な正社員というのは、会社に出社して一日約8時間程度。週に5日~6日働くことがこの国では当たり前とみなされている。しかし緑さんの働き方はまったく違うものである。週に4日までしか働かず、出勤は必要最低限で基本的には在宅で仕事をしている。「行動と言動が伴うようにしたい。違和感を持ったまま生きたくない」緑さんだからこその行動力である。

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●高原地区にある当たり前

 孝則さんは高原地区で生まれ、高校入学から大学2年生までの期間以外は高原地区で生活をしている。実家は林業を営み、孝則さん自身も山仕事のお手伝いをよくしていた。

山の上にある高原地区は綺麗な湧き水が近くで手に入る。そのことを外の人に言われて気づくことが多いという。高原地区は山の上であり、夫婦の家はエアコンなしでも生活ができるほど快適である。一方で孝則さんが出張で街のビジネスホテルに宿泊した際は、エアコンをつけると体調を崩してしまうという。

 林業の盛んな川上村。地元の人は木を丸太にしてお金にしているが、丸太にされた木がどのように使われているか知らない人も多い。地元の木を地元の人が使わないこともある。

●幸せに暮らしていくとは

 育ってきた地域・環境から現在の仕事まで正反対のように見える孝則さんと緑さん。そのような2人に共通しているテーマがある。

 

『つくるを楽しむ』

 

 2人が今、高原地区に住んでいるのも結果論であり、ここを目指していたのではない。

 「つくる」の内容は、孝則さん・緑さんそれぞれの特性を生かしたものである。

 孝則さんは実家の山仕事から得た木や山を扱う作業や、「一人水道局」と緑さんから呼ばれていたほど、役場の仕事で村の水道を一手に担っていたこと。また高原地区に当たり前にある自然を上手に扱うことができるがゆえ、南海トラフが来ても大丈夫だと言い切れる生命力である。

 一方の緑さんは、生き方・暮らし方に違和感を感じたらすぐに有言実行して、違和感をなくしている。深く対話できる友達がいなくて京都まで通っていた時期もあったとのことではあるが、今では緑さん自身が企画し、語り合う場をつくっている。

 

 二人の「つくる」は大きくまとめると、孝則さんは「モノ」、つまりは目に見えるもの。緑さんは「コト」、つまりは目に見えないものである。今日と明日は変わっている。自分自身も、他人も、目に見えるものも、目に見えないものも。常に変化していくからこそつくり続けなければいけない。そこには答えもなければ世間一般の人が言う当たり前なんてものもない。孝則さん・緑さんはつくり続けることを楽しみ、幸せに暮らしている。

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インタビューを終えて

 孝則さんと緑さんは本当に正反対だ。正反対がゆえに、まるでジグソーパズルのピースが組み合わさっているような夫婦であった。

入籍をする・出社して働くという世間でいう当たり前に対して緑さんは疑問を持ち、孝則さんは緑さんの意思を受け入れる。高原地区という環境に対して緑さんは新鮮に思い、孝則さんは高原地区の再発見をする。

 視点・価値観。そのようなものは人それぞれ異なっている。自分の中だけでは気づかないことも多い。冒頭の、外国に行って改めて日本という国がどのようなものなのか再認識させられる人も多いということと同じように、自分とは異なる視点を得ることによって初めて分かることもある。当たり前のことを互いに問いかけることによって、孝則さん・緑さんは二人に合わせた生き方を常に作り続けていっているだろう。

 

お問い合わせ

水源地課
電話:0746-52-0111