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森と水の源流館15周年記念日 皆さんのあたたかい気持ちにつつまれ開催することができました。

森と水の源流館15周年記念日 皆さんのあたたかい気持ちにつつまれ開催することができました。

2017年5月8日

平成29年4月29日 森と水の源流館15周年記念日
~ウラ話を交えてのふりかえり~
         公益財団法人 吉野川紀の川源流物語 事務局長 尾上 忠大

川上村の「水源地の村づくり」、その象徴となる手つかずの天然林「水源地の森」のことを中心に体験や環境学習として伝え、その恵みを川の水が届くところの人々とつなげて、いっしょに考えてきた拠点施設「森と水の源流館」(運営:公益財団法人 吉野川紀の川源流物語)では、設立15周年を迎え、誕生日となるこの日に記念事業を開催しました。オープンした平成14年、当時は「みどりの日」の祝日であったその日と同じように晴天の朝を迎えました。

源流館外観.JPG
➊晴天の下、お世話になった人たちを迎えた森と水の源流館

こんな歌の歌詞があります。

「♪冬と夏のあいだに春をおきました。だから春は少しだけ中途半端なのです~」

「15周年って、ちょっと中途半端かな~」「10周年は盛大にやったし、20周年に向けて、15周年記念日はこじんまりと!」。昨年からそんなことを考えていました。

ところが決して大規模ではないですが、この日は、思い出に残る、中途半端ではない大きな記念日となりました。10周年の時にも勝るというか、前の10年にはなかった、この5年間での歩みを多くの人たちと確認でき、その人たちそれぞれとのつながり方を、あたたかい気持ちとともに表現していただいた一日でした。みなさんへの感謝の気持ちでいっぱいです。

 

可能性を拓く!

今回の記念行事のコンセプトを次のように決めました。

十五の春に
お世話になったみなさまと楽しみながら
森と水の源流館の新しい“可能性を拓く”
そんな記念日にしたいと思います。

実は森と水の源流館のメイン施設「源流の森シアター」には、これまでナレーションや字幕による解説というものが全くない、「水源地の森」に居るがごとくの雰囲気を伝える空間でした。この15周年記念日からあらたに、川上村の取り組む水源地の村づくりや、この森の意味、森を守る意義を込めた約5分間のガイド映像を導入しました。そしてシアター内の明るさを調整できるようにしました。派手な演出照明ではないのですが、それによっていろいろな使い方できるようにしました。15年が経っても、まだまだ活かしきれていないところがたくさんあるはず。そんな可能性に挑戦していこう。われわれ財団で毎年スローガンを掲げますが、29年度は「可能性を拓く。」としています。記念行事では、第1部は音楽と映像、第2部はプレゼンテーション、第3部は集いと語らいの場として、この「源流の森シアター」を活かすことをみなさんに見ていただくこととしたのです。

オープニングでは

新しい映像をお披露目したあと、当財団法人の理事長である栗山忠昭川上村長のごあいさつにつづき、宮口侗廸(としみち)先生から「記念の言葉」をいただきました。宮口先生は、21年前に川上村の「川上宣言」を書かれました。以前より総務省の過疎問題委員会の座長として、わが国の過疎の問題に取組み、過疎地域に対して早くから光を届けてこられました。この3月まで早稲田大学で長く教鞭を執られてきた先生です。

「地域、地域にそれぞれの価値がある」先生のご専門の地理学とは、そのちがいを見つける学問であり、その価値を活かせれば過疎対策につながる。そんな言葉が印象に残りました。「川上宣言」とともにあった歩みを振り返る記念日のスタートを飾っていただきました。宮口先生、今回はわざわざこの行事のために遠くから駆けつけていただき、ほんとうにありがとうございました。
宮口先生.JPG
❷宮口先生からの「記念の言葉」

 

【可能性その1】

“森”に響いた美しい音色。思わず声が出た感動の景色。
第1部「風景と音楽で語る源流の村」 
Presented by 川上村水源地課

コンポーザーピアニスト山川亜紀さんは神戸市在住、平成25年の大滝ダム竣工記念式典のためにオリジナル「源流の郷」を作詞・作曲、弾き語りをしてくれました。それからもずっと川上村とのご縁がつづいています。橿原市在住の辻本勝彦さんも川上村とは不思議なご縁がある方で、ここ数年川上村のさまざまシーンをカメラに撮りためてこられています。きっとこれからどんどん有名になるフォトグラファです。辻本さんの撮った美しい星空の写真に端を発し、昨年、白屋の「未来への風景づくり」の現場で星空の観察と山川さんのピアノ演奏を川上村水源地課が企画していました。ところが3度にわたり悪天候に阻まれ実現が叶っていませんでした。もう寒くなった頃、今福氏(現水源地課長)と次年度事業の話の中で「ぜひそれを源流の森シアターでやりましょう!」というふうに話がトントンと進みました。そしてあれは朝拝式(2月5日)の日の夜でした。山川さんと辻本さんと、今福氏と私で橿原市内のとあるお店で集まりアイデア出しがはじまりました。いつものように川上村の思いを熱く伝え、お二人にもそれが伝わり、あっという間に構成やタイトルが決まっていきました。その後も打合せと会場での意見交換を重ね、また演者のお二人は忙しい時間をぬって大阪でも打合せをしてくれていたそうです。そんな思いの詰まった、そして“4度目の正直”となった山川さんと辻本さんのセッションとコラボレーションが実現したのです。
シアターをバックにライブ.JPG
❸まるで森の中でのコンサートのような雰囲気につつまれました。

 

ライブコンサート

「源流の郷」(歌)、オリジナル曲「春」(ピアノ)、「川は誰のもの」 (歌)、オリジナル曲「Friend」(ピアノ)を聴かせていただきました。山川さんには、これまでいろいろな仕事を手伝ってもらいましたので、シアターの森に響いた美しい音色に、いくつかの懐かしい情景が浮かびました。
山川亜紀さん.jpg
❹山川さんのピアノソロ演奏

 

フォトトーク「川上村 四季折々」

辻本さんの素晴らしい写真を解説とともにたくさん見せていただきました。あまりの美しい風景に会場からは感嘆の声がもれました。また「えっ、これが川上村?」と、住んでいる人も発見の連続。そして風景だけでなく、人のぬくもりが伝わってくる日常を切り取ったような写真も。辻本さんいわく「川上村でネイチャーではなく、カルチャーを撮ると決めた」そんな言葉が印象的でした。
フォトトーク.JPG
❺暗くした会場に大きく写した作品ひとつひとつ辻本さんが解説

 

ピアノブレイク

ふたたび山川さんにより、オリジナル「かわかみ 私のふるさと 」(歌)そして今回、 辻本さんの写真からインスピレーションを受けて作った新曲「奈良県川上村に寄せて〜はじまりの朝〜」を美しい写真画像と共に初披露されました。思えば山川さん、川上村のために創ってくれた曲や歌が、たくさんあるんですね~。

トークセッション「源流のめぐみとその表現」

音楽と写真、お二人の表現方法は異なりますが、川上村に寄せる思いや、川上村に魅かれるところは、もしや同じ方向を向いているのかも・・打ち合わせ中の雑談がトークセッションになりました。 写真、音楽についての話題のほか「今年こそは、星空観察と屋外ライブをやりましょう」という展望でしめくくりました。
トークショー.JPG
❻辻本さんお気に入りの「未来への風景づくり」の現地からの眺望をバックに二人のトーク

 

スライドショー

最後にオリジナル曲「clear wind」の演奏に合わせて、辻本さんがあらかじめ創られたスライドショー「流るる時」が上映されました。

コラボ作品.png

第2部を終了し、席を立つみなさんからは「すばらしい!」の言葉がありました。

(本作品はホームページ内の「観光情報>動画でめぐる川上村」でもご紹介しています。youtubeでもご覧いただけます。)

https://youtu.be/RwKH8OZQ54o

 

【可能性その2】

「つなぐ・つたえる・つづける。」その活動のページをめくる。
第2部『思いをつなぐ川』リレートーク

源流の森シアターは、その名のとおり「森」を伝える空間です。そこへ新たなガイド映像で水源地の村からのメッセージを盛り込みました。しかしそれでも伝えきれなかった吉野川紀の川の流域のつながりについて、この記念日では伝えたい。それを発表するプレゼンテーションの場としました。

3年前の平成26年は、川上村でも特に大きなできごとがあった年です。「第5回全国源流サミット」「第34回全国豊かな海づくり大会」それぞれのテーマは、「真の流域連携とは何か」「豊かなる森がはぐくむ川と海」でした。森から海までのつながりが注目されたこの年に、私たちの流域の人のつながりを何かまとめておきたい。それで一般社団法人近畿建設協会の助成事業を受けて『思いをなぐ川』というタイトルのパンフレット冊子をつくりました。「思いをつなぐ川」というタイトルは、源流サミットのクロージングセレモニーのために、これも山川さんが創ってくれたオリジナル曲「同じ流れの中で」の歌詞からいただいたものでした。
コラボ企画.jpg
❼26年の源流サミットで披露した「同じ流れの中で」での演奏からスタート

 

表紙をめくったところに「川上宣言」に並べて以下のように書きました。

「源流」とは、水の流れの始まりを意味します。
水の届くところ、受ける人があってこその「源流」です。
流れていく先々には、たくさんの人と物語があります。
場所は違えども、吉野川紀の川という同じ流れでつながり
その時々に、さまざまなテーマで交流し、互いを高めあう仲間たちです。
そんな仲間たちへの感謝の気持ちをこめて
「吉野川紀の川流域人絵図」をまとめました。

このコーナーでは、冊子をめくるように登場する人とできごとを紹介しながら、私の語りで進めさせていただきました。
思いをつなぐ川.JPG
❽歌の歌詞からタイトルをいただいたパンフレット冊子「思いをつなぐ川」

 

ネイチャーフォトグラファー内山りゅうさんとの思い出。和歌浦のしらす漁師、髙井宏さんとの出会いのエピソード。大和平野から9トンの新米が川上村に届いた「おかげ米」の感動。長年続けていただいている「和歌山市民の森づくり」では、この日駆けつけていただいた森林環境保全促進和歌山市議会の寒川会長のメッセージを読ませていただきました。和歌山市立加太小学校と川上村の交流。開館間近の年から「吉野川紀の川ふれあいデー」「源流まつり」を通じて私たちを育てていただいたNPO法人奈良21世紀フォーラムの故大辻康夫さんを偲びました。

紀ノ川農業協同組合 宇田篤弘組合長と語る「紀の川じるし」

平成18年の出会いから、なにかにつけて助けていただいた宇田さん。今の流域のネットワークはこの人なしにはなかったと思います。そんな宇田さんと漁師の髙井さんたちと立ち上げて動きはじめている「紀の川じるし」。3月に同農協の「ふうの丘直売所」で行った「紀の川じるしの見本市」についても報告しました。「紀の川じるしで一本の川でつながる産業と生業、そして生き方のようなものを見えるよう伝えていきたい」そんな言葉をいただきました。ふうの丘では、このゴールデンウィークに見本市の第2弾を開いていただけるとのこと。「紀の川じるし」が確実に歩き始めていることを会場のみなさんに知っていただくことができました。
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❾-1宇田さんと「紀の川じるし」を語る❾-2

 

 

奈良市立平城小学校 新宮済先生から源流館と共同研究したESD授業の報告

ESD(Education for Sustainabule Development)とは、持続可能な社会形成を担う人づくりのための教育。つまりは、考えて、行動できる人づくりということ。新宮先生は、このESD推進において中心となっている奈良教育大学の中澤静男准教授らの指導による社会科教育研究に参加していおられます。平成27・28年の2年間、4・5年生の授業づくりで森と水の源流館が共同研究機関として参加させていただきました。

そのことや子どもたちからの授業成果をメッセージとともに届けてくれました。
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❿新宮先生から森と水の源流館と共同授業の報告

 

このつながりを村民のみなさんと共有できた「流域学習会」

このように、いつも源流、水源を思い、応援いただく流域の人々とぜひ村民の方たちにも直接出会ってほしい。そんな思いで平成21年からスタートした「吉野川紀の川流域学習会」をふりかえる写真も見ていただきました。

第2部終了後に、事務所で多くの方が「思いをつなぐ川」の冊子を求めていただけたそうです。うれしい限りです。初版から4回の増刷を重ねたパンフレットの新たな活用の可能性が見えた気がしました。

 

【可能性その3】

心強い仲間たちと普段着のままの語らいを再現。
第3部「源流人さん、あつまれ!」

森と水の源流館では、開館当初より「源流人会」という会員グループがあります。会員のみなさんには、それぞれのカタチで応援をいただいています。しかしなかなか会員数は伸び悩んでいる課題があります。「もっと源流人会のことを知ってほしい」最後のコーナでは、いつもフィールドでの水源地の森ツアーのサポートや、調査や森づくりで強力なメンバーとして協力をいただく8人の会員さん、そして客席にもいてくれた会員さんにも声をいただきながら、飾らない雰囲気を大切にし、山小屋でいろりを囲んでいるかのような演出で、語り合っていただきました。第1部、2部とはまた違った、和やかないい時間が流れていました。
源流人のみなさん.jpg
⓫ゴザを敷き、山小屋での語らいを再現

 

 

【もうひとつ可能性】

森・里・海をつなぐ活動の具体的な“作品”
紀の川じるしの御弁当

前述の「紀の川じるしの見本市」を行ったふうの丘に「ムリーノ」という洒落たカフェがあります。見本市の期間中の週替わりランチに「紀の川じるし 川上から海までのプレート」を出してくれていました。お願いをしたわけではなかったのですが、「紀の川じるし」という言葉に込めたコンセプトが伝わり、つながったことを感じました。なので、この記念日のランチも普通の弁当ではダメだ。そう決めました。そこで「紀の川じるしの御弁当」を企画。和歌浦のしらす、加太のひじき、紀ノ川農協の新たまねぎ、清流のこんにゃくなどを使った献立の弁当を事前予約で販売。60食を準備しました。この弁当を楽しみに来てくれた人もいたようです。みなさんから「おいしい」とのお褒めをいただきました。うれしかったです。忙しい時期に面倒を受け入れてくれて試作まで作って、いっしょにチャレンジをしてくれた川上村大滝の「すぎもと弁当」さん。仕入れにいっしょに回ってくれた地域おこし協力隊やまいき市の岩本君に感謝します。

また、それでも食べ物や飲み物が足りない課題が、いつもイベントごとには付きまといます。そんな中で、今年から稼働をはじめた「かわかみらいふ」の竹内事務局長からのご提案で、この日は移動スーパーが出店してくれました。「かわかみらいふ」のみなさんの心意気に感謝です。そして昼食会場にやまぶきホールのホワイエを開けていただいた川上村教育委員会にも「ありがとうございます」。
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⓬源流から海まで恵みをつないだ「紀の川じるしの御弁当」
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⓭弁当に添えて手渡した献立

 

うれしかった、たくさんの方々の笑顔。たくさんのメッセージ。

記念の一日に村内外から300名を超える方々にお越しいただき、また約60通のメッセージを事前から頂戴し、感謝の気持ちでいっぱいです。

宮口先生の「記念の言葉」から第1部・2部・3部とも、つながりをいただく方々の思いにより実現できたものばかりで、私たち職員の力だけでは何もできないことをあらためて実感しました。

 

15年、ともすれば同じことの繰り返しで過ごすこともできたかもしれません。しかしいつも仕事に向いて心得てきたことがあります。

・一年にひとつでもいい、「思い出」に残る仕事をすること。
・一年に一人でもいい、「ずっとつきあいたい」と思ってもらえる出会いをすること。
・そしてその仕事には、心を込めた贈り物をするように取り組むこと。

それが、間違っていないことを実感させていただける多くの人の笑顔でした。
みなさん、ありがとうございました。

 

最後に、文頭にご紹介した歌の最後はこんな歌詞で終わります。

「♪この歌は、僕からあなたへの(心から-)贈り物です」

(オフコース「僕の贈り物」)