公開日 2018年11月28日
川上村では、色んな人が参加しながらホームページを使って情報発信する「 むらメディアをつくる旅 」を開催しています。今回は川上村で「アルボールかわかみ」という喫茶店を立ち上げた3人のお母さんをインタビューし、インタビューに参加した4名(久保田紗佑歌さん、中能理紗子さん、高田幸一郎さん、花輪佑樹さん)が記事を作りました。このページには中能さんの記事を代表例として掲載していますが、外部ブロクに他4名分の記事も載せています。そちらもぜひご覧ください!
▼久保田紗佑歌さん
▼高田幸一郎さん
大中小なおかん飯 明るくていつも笑顔が素敵なおかん3人がきりもりするアルボールかわかみ
▼花輪佑樹さん
笑顔を生みだす、3人の魔法使い。アルボールかわかみ発の村おこし
▼中能理紗子さん
つながりの輪は村を越える!3人のお母さんがカフェから紡ぐ村おこし
奈良県川上村にある小さなカフェ、「アルボールかわかみ」の大田千加子さん、中平ます美さん、小林美代子さんをインタビューさせていただきました。
定年を迎えた3人のお母さんたちが村おこしなどを目的にカフェを開いたのは、人口減少の続く川上村。人口減少と聞くと、どうしても暗い印象を持ってしまいます。しかしそんなこととは対照的な笑顔がそこにはありました。
大田さんが「3人足したら200歳。次(取材に)来たときは300歳。」とみんなを笑わせると、「さんばばだ」と小林さんがすかさず加わり、中平さんは笑ってうなずきます。
笑顔の絶えない3人の明るさはどこからくるのか。村おこしとは、地域活性化とは何なのか。
彼女たちの言葉から、その答えが見えてきました。
●「この場所もったいないなぁ」から始まった。
元々同じ職場で働いていたという3人。さらに子供がいたという共通点から、学校や村の行事などを通じて自然と仲良くなったそう。
そんな3人がカフェを始めることになったきっかけは、空き家を見て言った大田さんの「この場所もったいないなぁ。」という一言。小林さんと「カフェでもしようか」と冗談のように話していたといいます。しかしその後食堂を経営していた経験のある中平さんが加わって、役場に場所を提供してもらい、その言葉は実現することになります。
お店の名前、「アルボールかわかみ」はスペイン語の「木」を意味する言葉から。
もちろん始めは上手くいかないのではと不安だったそう。それでも「じっとしてたらあかんなぁ」と家具や電化製品を自分たちで買い揃え、開店まで行きついた3人の行動の裏には、「川上村を元気にしたい」という強い決意がありました。
●5年も続くと思ってなかった
朝は10時から営業しているアルボールかわかみ。うどんや唐揚げなど主に定食を提供しており、夕方の16時半にお店を閉めます。(定休日は水曜日)
メニューはお客さんのリクエストでどんどん増えていったそう。
今年の春には「かわかみのダムカレー」が新たにメニューに加わりました。
これは村の水源地を守っていこうというコンセプトのもと、村の企画で作られたもの。
村内の6店舗と紀の川沿いの1店舗が、川上村の大滝ダムと大迫ダム、そして水源地の森をそれぞれ思い思いに表現しています。
もうすぐ村の小学生が育てたブロッコリーが「水源地の森」になるそうで、「ありがたい。楽しみにしている。」ととても嬉しそうなお母さんたち。
そんなアルボールかわかみはもうすぐ開店5周年を迎えます。「始めた時は5年もできると思ってなかった」と話す3人ですが、5年の間彼女たちを動かしてきたものは何だったのでしょうか。
●小さな喫茶店が生み出す「つながりの輪」
お母さんたちの会話は聞いているだけでも面白いですが、話してみるともっと面白い。
そんな抜群のトーク力をもったお母さんたちとの会話を楽しみに来るお客さんもたくさんいるはず。
アルボールかわかみにお客さんが来なかった日は1日もないといいます。
村外のお客さんも多く、驚くことに柿の葉寿司を東京のお客さんにも送っているのだとか。
そんなお客さんたちとお話をしたり、カラオケや旅行に行ったりすることがお母さんたちの一番の楽しみ。
そして一番嬉しいことは、たくさんお客さんが来てくれること。それが、3人の原動力になっているといいます。
「周りの人に動かされています。」「つながりの輪の中に生かせていただいています。ありがたい。」という小林さんの言葉が印象的でした。
取材を終えて家に帰った後、川上村のお母さんたちを思い浮かべながら「自分の居場所」が増えたように感じたのは、私もすっかりこの「つながりの輪」の中に入ったということなのだな、と嬉しくなります。
大田さんは元々パン作りが得意で、「パンとコーヒーのお店をしてみたいという夢は叶わなかったが、こうしてお店ができて嬉しい。楽しいことばっかり」と話します。
3人の中には「カフェを通じて村おこしがしたい」という思いがあったといいますが、この大田さんのお話と、中平さんの「手作りの料理で喜んでもらえたら」という言葉の中に、本当の村おこしのヒントが隠されているように思います。
今は日本全体で人口が減少していく時代。
そんな時代に地域を活性化させるにはどうしたらいいのか頭を悩ませている地方自治体はきっと多いはず。
ではどういうことを活性化というのでしょうか。
移住者が増えること? 新しい建物がたくさんできること?
3人の笑顔を見ていると、それは「村での暮らしを楽しくすること」なのではないかと感じます。
「これからもっとこうしていきたいなどありますか。」と私が質問すると、「そんなんないよ。ぼちぼちと借金せずやっていけたらいい。」とさらりと返されました。
「上を向いて。毎日感謝して、すぼまないように。」
1人1人が自分のしたいことを「ぼちぼち」楽しむ。無理はしない。
1人じゃ楽しくないから3人で。そしてそのつながり5人、10人、村の外の人も巻き込んでどんどん大きな「つながりの輪」になる。
そうして気づいたら自分も村も元気になってる。
そんなあり方が素敵ではないでしょうか。
大田さんいわく「猫が転んでもわかるくらい小さな村」。そんな村のたった3人の主婦が生んだ大きなつながりは、今日も村を越えて広がっていきます。