未来を、うるおす。奈良川上村

No.13

Moritomizunogenryukan

自称「中年ならぬ、
虫を追い続ける虫年男」!?
昆虫博士は
しゃべり出したら止まらない(笑)

「森と水の源流館」で働く古山暁さんは、
奈良県内で(いや、全国を見渡しても)、
こんなに昆虫のことを知っている人はいるの?
と一目置かれるほどの無類の昆虫マニア。
東京農業大学で昆虫生態学を専攻し、
1年前に川上村にやってきました。
面白くてわかりやすい昆虫学の話は子どもたちを虜に。
本人が認める「変人ぶり」の一部と、
川上村の自然や森と水の源流館の魅力を
存分に語っていただきました。

昆虫にどハマリした
(=人生を踏み外した!?)1歩目は、
初めて1匹の標本を作ったとき(笑)

森と水の源流館の館内ツアーでは豊富な知識と巧みな話術で、聴く人を楽しませてくれる古山さん。彼曰く、道を踏み外した=昆虫にハマったのは記憶にないくらい小さい頃だとか。「ちょうどファミコンが普及した世代だったんですけど、そんなものには目もくれず、一人で網を持って野に出かけていたので、毎年夏休み明けには一人だけ肌が真っ黒。本格的に虫屋(昆虫愛好家の総称)を目指すきっかけとなったのが標本作りでした。知識もなくただ虫をブスッと針で刺していたら、母が見かねて標本キットを買ってくれて。あの時、手を出していなければ…(笑)。昆虫の世界は自然が相手。生き物の生態はもちろん、環境保全のための調査など幅広く学んできました。一番興味を惹かれたトンボは、一つの種を16年間も追い続けています。ストーカーですよ(笑)」。昆虫に関する質問にいろんなエピソードや例え話を交えた解説は、子どもたちが夢中になるのも納得の面白さです。

未発見の昆虫が
1,000種以上はいるんじゃないかなぁ。
これだけ面白い土地があるなら、
みんなに教えたい!

川上村には昆虫の未記録種、未記載種(学術論文などで正式に分類学的記載が行われていない生物種)がいるか、いたとして何種類くらいか、想像つきますか?「僕が考えるに、昆虫に関する各分野の専門家が集まって水源地を探索したら1,000種以上は見つかりそうですよ」と、驚きの答えが。「川上村には人の手が入っていない原生林に加えて、吉野林業という歴史が生み出した土壌があります。豊かな自然に囲まれた源流域や、樹齢400年以上の大径木を擁する歴史のある人工林なんて昆虫や生き物の宝庫ですよ。それと、杉・檜の人工林との境界となる尾根筋には、きちんと天然林を残しているのが川上村の林業が上手いなぁと感じるところ。人の暮らしで自然を壊さず、寄り添おうとする姿勢って生き物はちゃんと見ているんです。そういった川上村の自然に対する考えに大きく共感できたんですよ」。昆虫の生息地としての面白さと川上村の取組みが、ここで働く動機になったそう。「実はこんなに昆虫オタクだとね、就職するところも限られてくるんですよ。だから、自分の能力を認めてくれた川上村に感謝しています。子どもたちに昆虫を通して、環境保全にも興味を持ってもらえるようになることが、奈良県の自然に育ててもらった僕からの恩返しになるかな」。

全力で面白いことに
取り組む仲間たちに囲まれているから
すごい化学反応が起きるんですよ〜。

子どもたちから「どうしたら古山さんみたいになれますか?」と質問が出るほど、憧れの存在となっている古山さん。楽しみながら川上村の仕事に向き合っていることが自然と伝わっているのでしょう。「館内の標本やディスプレイも『面白い!』と思わせる工夫をしています。森と水の源流館には、僕が『おおっ!』とうなるほど、関節や翅の可動域を忠実に再現して“生き物”を作っちゃうスタッフもいます。また、生き物や自然の魅力を子どもたち自身に見つけてもらうことを、僕は大切にしています。押し付けると、子どもって逃げちゃうから(笑)。そのために、まずは子どもでも実践できることをさり気なく教えてあげるんです。例えば、ガイド中に身につけているアクセサリーは鹿の角で作った僕のお手製。見せてあげると、子どもたちも『作ってみたい!』と興味を持ってくれます。そこに親子の会話が生まれて興味の輪が広がり、みんな巻き込まれていく…そうなったら僕の作戦は成功です」。 森と水の源流館では、苔や歴史の専門家などいろんな先生(スタッフ)がいて各分野のイベントも大盛況。また、吉野川紀の川流域のつながりから、和歌山県立自然博物館との共催イベントを行うなど広がりを見せています。「『古山さんがいるからイベントに参加したい!』と思わせることが一つの目標ですね。こういった魅力づくりが、川上村の発信力につながればと思います」。まだまだ古山さんの話は尽きません。古山さんの話の続きは、ぜひ川上村で!!

 
 
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